庄内協同ファームだより

トップページ > 庄内協同ファームだより > 庄内協同ファ-ムだより 発行 No.94 2003年3月

神様と仏様

佐藤清夫 鶴岡市 2003/3/24

我が家には、仏壇とそのうえに神棚がある。宗派は浄土宗であり、神様のほうはみんなと同じ天照大神である。神様と仏様を一緒に祭ってあるのがこの辺の普通の家であり、小さいときは神様と仏様では、どちらがえらいのかと考えたことがあった。
神様については、「古事記」に書いてある国を造る国生みの話があるそうだが、その一説を書くと、イザナギノミコトはイザナミノミコトに「汝が身はいかにか成れる」と問うと、「吾が身は、成り成り成りて成り合わざる処一処あり」と答える。そこでイザナギノミコトは「我が身は、成り成りて成り余れる処一処あり。故、此の吾が身の成り余れる処を以ちて、汝が身の合わざる処にさし塞ぎて、国土を生みなさんとおもう」というのである。

このようにして、日本の国を造った神様はえらいに決まっているが、その製造方法は人間の所作とほとんど同じである。そしてたくさんの神様を造り、ヤオヨロズノ神はこのようにして出来たのだ。また、農家を取り囲む自然はすべて神様になっている。火の神、水の神、田の神、山の神と今でも活躍している。
一方仏様は、中国からの外国文化として入ってきたのが奈良時代になる。仏教も神道も多神教であるためかあまり排他的にはならずに、仲良く共存してきたのだという。
法然がいうところの「ナミアムダブツ」を唱えることで極楽に行くことができるという浄土教は、平安時代爆発的な流行だったという。何が当時の人達の心をとらえたのかはわからない。

今の私の「ナミアムダブツ」は生活習慣のひとつに過ぎないが、そんなにうまい話があるわけがない。また当時の人達にしても本当に極楽浄土なる所にいきたかったのかどうか疑問である。今は無料では極楽には行けないことになっている。
私の周りの人達は先祖を大事にする。正月、お盆、春彼岸、秋彼岸は先祖様が帰ってくる日である。出来る限りのご馳走でもてなすこととなっている。春祭り、秋祭りが両彼岸に当たる。これは神事であり神様の行事である。
先祖様が帰ってくるという考えは仏様にはない。極楽浄土というはるか遠くに行ったきりである。あまりに遠いから帰ってこられないのである。これらのことから見ると、
仏様より神様のほうがより深く我が家に影響を与えていることと思う。
皆さんのうちでははたしてどうだろうか?

2003年度・庄内協同ファーム生産者集会
「栽培技術講習会を終えて」

改正農薬取締法の施行を直前に控えた3月3日(月)に組合員、協力組合員を対象に栽培技術講習会が開かれました。

忙しい春作業に入る前の1日を、茨城大教授、中島紀一氏と、県農業試験場、上野正夫氏をお迎えしてご講演いただき、もっと大勢の人に聞いてもらいたかった、という感想を持ちました。中でも、今までに数回機会を得ている中島先生のご講演は、改正農薬取締法について、とてもわかり易く、独特のコメントを含めながら説明して下さり午前中があっという間に終わってしまいました。
 法律がこうも性急に施行されることになった理由のひとつには、昨年の無登録農業問題があったのは、周知の通りです。禁止農薬にもかかわらず、それが全国的に流通し、
使用されていた実態が明らかになり、国民の食に対する信頼を大きく損なう問題に発展したためです。

主な改正点を紹介すると
1. 登録農薬の製造、輸入、使用の禁止
2. 薬使用基準に違反する農薬使用の禁止
3.罰則の強化
の3点があげられます。

又、この法律の施行に当り、新たに無登録農薬の製造や使用を禁止したために、安全性が明らかなものまで農薬登録を義務付け過剰規制とならないように特定農薬という仕組みを作りました。

ところが、有機農業を目指す農民が化学農薬の代替として、編み出して来た工夫や、病害中防除や除草の為に水田に放すアイガモさえも、特定農薬として登録しないと使用は禁じられるという奇妙な結果を生むことになり“アイガモも農薬か?”と大きな論争を呼び、新聞記事を賑わしたことは皆さんの記憶にも新しいことと思います。
危険農薬の規制強化のはずが、論議は意外な方向へ発展し、先生いわく“これは、農薬行政からの煙幕だったのではないか”とのことですが、お話を伺ううちに思わず、なるほど、とうなずいてしまいました。

そして、私達生産者側から見れば、農薬取締法は、生産者自身や、生産者の健康を守るものでは決してなく、食卓の残留ppmを守るものだという事が、よく理解できたと思います。
そして、慌しく結んだ中島先生の一言。“農薬のリスクについて厳しい認識を持ち、農薬を使わない農業の可能性を消費者と手を取り合って本格的に進めなければならな
い。それ以外に生き残りの道はない。”いつもいつも、にこやかな笑顔で厳しいことを平然と言ってのける中島先生の貴重な結論でした。

 盛り上がった午前中の講演の後、簡単な昼食をすませ、午後は、県の有機農業の研究に関する中枢機関を職場とする、上野正夫氏の講演でした。
これから、県がどのような形で有機農業を推進してくれるのか、その為に今どのような事を行なっているのか興味津々であっただけに、ちょっと肩透かしを食ったような物
足りなさが残りました。「有機農業の技術的課題とその対応方法」の演題に寄せた期待はさておき、担当者の講演の中から有機農業推進に対する意欲や、力強さが汲みとれなかったことは、とても残念に思いました。

 あれから約1ヶ月、季節は進み、吹く風の中にも華やいだ春の匂いが満ちています。
生命あるものすべてが動き出す、この春こそが私達農民にとって1年の始まりです。稲倉の前に置かれた水槽には、既に温湯消毒を終えた種もみが、徐々に水分を含みながら時満ちて出番が来るのを待っています。
 あれもこれもと一気に作業が集中する4月をまだ全開になり切っていない頭と体で追いかけて行きます。再び巡り来た春に感謝し、今年も無病息災で大地と向き合う仕事を楽しみたいと思います。

発行事務局 志藤知子

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